良く聴くノート | 認定補聴器技能者による補聴器と聴こえのブログ

空気亜鉛電池(補聴器用電池)とアルカリボタン電池の違いについての解説しました

2020/04/20
補聴器の電池
補聴器 空気亜鉛電池
先日にお伝えした補聴器用の空気亜鉛電池を体温計等には使用しないでください!に関わり、
私がTogetterにてまとめた『体温計用の電池(LR-41)を補聴器用の空気亜鉛電池(PR-41)で代用しないでほしいという話』を多くの方に見ていただきました。

また、たくさんの方が積極的に情報発信をされており、空気亜鉛電池を別の用途と間違わないような注意喚起が広まっているようです。

ありがとうございます。

今回は、空気亜鉛電池が補聴器の使用に適している理由について、詳しく解説します。


まず、空気亜鉛電池とはどのようなものかを簡単に説明します。

空気亜鉛電池とは、空気中の酸素との化学反応によって発電する電池で、容量が大きく、電圧が安定していることが特徴です。
電池を使用していないときも少しずつ自然放電することがデメリットです。電池サイズや容量にもよりますが、発電が始まってからおおよそ1週間から1か月程度で電池残量が無くなります。
そのため、未使用の電池にはプラス極にシールが貼付されており、空気との接触を抑えております。

ボタン電池に良く使用されるアルカリ電池や酸化銀電池と比較すると3倍以上の電池容量があるので、電力消費が大きい製品に向いています。現在では補聴器や集音器で主に使用されているため、電池パッケージにも「補聴器用」と記載されていることが多いです。

逆に電力消費が少ない製品は、電池容量が小さくとも自然放電が起こりにくいアルカリ電池や酸化銀電池の使用が適当です。

また、アルカリ電池は、電力消費が進むとともに出力電圧も徐々に低下していきます。
電気機器は製品ごとに正常に動作する電圧の範囲が存在します。
とある電気機器が1.1V~1.7Vの電圧で動作する場合、アルカリボタン電池でも十分に使用することが可能です。

一方、時計のような精密機械は、なるべく電圧が一定であることが望ましいとされています。
空気亜鉛電池を使用した場合、自然放電により数週間ごとの電池交換が必要となるため、使用は適しません。
酸化銀電池はアルカリ電池と同程度の容量であり、且つ電圧が非常に安定しているため、時計などの電力消費の少ない精密機械に適した電池です。


以上を分かりやすく図解したいと思います。
図は、酸化銀電池 SR-41、アルカリ電池 LR-41、空気亜鉛電池 PR-41の使用経過に伴う電圧量の変化を表しています。
縦軸は電圧、横軸は電池容量の残量を示していますが、精密な検査結果に基づくものではなく、電池容量や電圧の公称値を参考にしたイメージのため数値や単位は省略しております。
あくまでも、参考イメージとしてご覧ください。
電池消費

それぞれ、電池使用開始時は公称値の電圧であると仮定しています。
空気亜鉛電池は、使用開始前のシールを貼ってある状態では電圧が低い状態にあります。シールを剥がして空気と反応することで公称値の電圧に達します。

アルカリ電池は先述の通り、使用するとともに電圧が低下していきます。

酸化銀電池と空気亜鉛電池は電圧が安定することが特徴とお伝えしましたが、実際に使用する際は、温度や湿度などの影響によって公称値より小さい数値となることが多いです。そのため、図では使用開始直後に電圧が下がっていますが、その後はほぼ一定となります。

酸化銀電池は容量が完全になくなる直前まで電圧を保っているのに対して、空気亜鉛電池は電池容量が少なくなると電圧が下がり始めます

なお、補聴器の電池残量アラームは、電圧がある一定の値まで低下した際に作動するように設定されています。

つまり、「電池残量アラームが作動する電圧=補聴器が動作する電圧の最低値」であると考えてください。


空気亜鉛電池を体温計で使用できたのは、たまたま動作可能な電圧の範囲が一致したためだからでしょう。
しかし、どの体温計でも同様であるとは言い切れません。

既定の電圧と異なる電池を使用することで故障したり、一時的に使用できたとしても、器械に少しずつ負荷が掛かりいずれ故障したりといったことは、十分に考えられます。

これは、体温計においても、補聴器においても、それ以外の電気機器においても共通します。

取扱説明書などに書かれている以外の使い方により故障が起きてしまった場合、器械の製造元も電池の製造元も、販売した店舗も、基本的にはその責任を負うことはできません。

体温計は健康管理に必要なものですし、補聴器は生活そのものに欠かせないものです。

間違った使い方をしないように、取り扱い方法をよく確認して、十分に気をつけてください。