良く聴くノート | 認定補聴器技能者による補聴器と聴こえのブログ

補聴器専門店は値引きしてくれる? 仕入価格と販売価格の話

2020/09/13
補聴器の選び方
補聴器 難聴 補聴器販売店
補聴器の購入を検討しているけれども、金銭的な負担が大きくて躊躇っているという方は少なくないでしょう。
少しでも安く購入するための助成制度については『補聴器の購入支援制度・助成金支給制度について 36万円安く買えることも!?』にて紹介しましたが、今回は補聴器販売店(眼鏡店や電気量販店の補聴器売り場を含む)での補聴器の値引きについて解説します。

最初に結論を記載しますと、
補聴器販売店は補聴器を値引きして販売することが可能です。

そもそも、値引きというのは商品の製造元が定めた販売価格(カタログ記載価格、メーカー希望小売価格)よりも低い金額で販売することを指します。
私たちが日常生活で購入することができる食料品、衣料品、雑貨などは、小売店が自由に販売価格を決めることができます。

小売店が販売価格を自由に決められるのは、経済活動の自由の原則に基づき、独占禁止法という法律によってその権利が守られているからです。

補聴器についても、小売店が販売価格を自由に決めることが可能です。

もちろん、自由に販売価格を決められるとは言っても、補聴器の仕入れ値、店舗運営の費用、設備の減価償却、人件費などを確保しなくては、補聴器の販売を継続することができなくなるので、安易に値引きできるわけではありません。



補聴器の仕入れ値は、補聴器販売店ごとに異なります。2掛け(メーカー価格の2割)で仕入れている補聴器店もあれば、8掛け(メーカー価格の8割)で仕入れている補聴器店もあります。

メーカーや卸売業者は販売台数や売上が多く見込める販売店には低い仕入れ値を設定します。
補聴器を毎月1台や2台しか販売しない補聴器店に対して、仕入れ価格を低く提示しても利益は出ませんが、数十、数百と販売する補聴器店であれば仕入れ価格を低く提示しても十分に利益が上がるからです。

補聴器販売店は高く仕入れられるメーカーの補聴器よりも、安く仕入れられるメーカーの補聴器を販売した方が売上が大きくなるので、安く仕入れられるメーカーの補聴器を積極的に販売します。

また、メーカー系列店(メーカーの小売り部門や子会社)も、補聴器を安く仕入れられます。

下図は、卸売業者と取引をしている一般販売店、メーカーと直接取引をしている特約店(安く仕入れることができる販売店)、卸売業者と取引をしている特約店、メーカー系列店の仕入れ価格の違いを 架空の補聴器メーカーX社の場合としてイメージしたものです。
仕入価格販売価格

メーカーX社の場合ですが、系列店ではメーカー価格の3割で補聴器を仕入れることができます。10万円の補聴器であれば3万円、50万円の補聴器であれば15万円をメーカーに支払います。

卸売業者も系列店と同じく3割で補聴器を仕入れています。卸売業者がメーカーの子会社という場合もあります。
卸売店と取引している一般販売店は、メーカー価格の6割で仕入れています。10万円の補聴器であれば6万円、50万円の補聴器であれば30万円を卸売業者に支払います。

取引が安定している補聴器店は、特約店として仕入価格の優遇を受けられます。
メーカーX社の場合、メーカーとの直接取引の場合も、卸売業者を仲介する場合も、特約店は5割で仕入れることができます。

実際の補聴器市場はもう少し複雑で、販売店をAランク、Bランク、Cランク……とランク付けされており、それに応じて掛け率が決められていたり、他社メーカー製品を取り扱わないことを条件に掛け率を下げたりといった駆け引きが行われています。

販売店の規模や売上によって、仕入れ値が違うということだけ頭に入れてください。


小規模の店舗であれば、人件費や店舗運営費も小さいため、掛け率が高くても利益を出すことができます。
大規模の店舗であれば、人件費や店舗運営費が大きくなるため、掛け率が低いからといって利益が出やすいとは限りません。

つまり、掛け率の差によって販売店の利益が決まるわけではないのです。
高く仕入れることができる補聴器店では値引きしても利益が出るが、安く仕入れることができる補聴器店では値引きをしたら利益が出なくなるということも有り得ない話ではありません。

メーカー系列店であれば値引きしても利益を十分に出せます。しかし、系列店が50%引きで補聴器を販売した場合、補聴器ユーザーは系列店以外での購入を敬遠してしまいます。系列店以外の販売店はメーカーX社との取引を止めて、他メーカーの製品を取り扱うようになるでしょう。
国産補聴器メーカーの中には自社のみで販売を行っている会社もありますが、そのような例外を除けば、メーカー系列店は値引きに対して非常にシビアです。
補聴器販売店に補聴器の値引きを期待するのであれば、メーカー系列店は避けた方が良いでしょう。


メーカー系列外の補聴器店が値引きをするかどうかは、その補聴器店にメリットがあるかどうかです。
例えば、著名人がプロモーションに協力するといったことであれば、赤字になってでも値引きをすることもあるかもしれません。
口コミやSNS、メディアでの強い発信力を持つわけでもなく、補聴器販売店のスタッフと個人的な付き合いがあるわけでもなければ、赤字を出してまで値引きをすることは有り得ないでしょう。

値引きをしない場合より、値引きをした場合の方がメリットがあるならば、補聴器販売店は値引きする可能性があります。

中には補聴器を安く販売する代わりにアフターフォローは一切行わないという店舗もあるかもしれません。
生協や農協による販売であれば、組合に加入することを条件に値引きすることがあるかもしれません。

補聴器は機種選定や聴力測定、アフターフォローが必須です。
それらを考慮して、少しでも安い方が良いのか、値引きはしないけれど今後も安心して補聴器を使える環境が良いのか、十分に考えて補聴器販売店をお探しになると良いでしょう。